――それだけ事態が切迫して、苦渋の決断だったんだろ!!?
どうして…そんなに僕をよく思ってくれるの?
僕だったらきっとそうには思えない。
心の中は嫉妬で渦巻き、詰る言葉しか出ないはずだ。
"お前、状況を考えろ"
私情より優先すべきことがあるのではないかと、怒鳴るはずだ。
"何においても櫂を守り、櫂の為に団結するのが最優先事項だろ!!?"
櫂に仕えろ。
櫂を優先させろ。
そんな正論を、嫉妬をひた隠しにして叫んだはずだ。
だけどあいつが言ったのは――
"お前の世界に居るのは…
櫂と芹霞だけじゃないだろう!!?"
鮮烈な橙色。
何処までも暖かい色だね。
芹霞が…ほっとするのも判る。
"俺だって、お前には愛のない結婚も、愛のない子供も作らせたくねえんだよッッ!!それは芹霞がどうのの問題じゃなく、お前が櫂に思っているのと同じコトくらい、俺だってお前に感じるんだッッ!!"
僕は本当に…孤独だったんだね。
お前達の存在を忘れるくらい、僕は。
暖かいね。
僕…ずっと判って貰いたかったんだ。
この…八方塞がり的な、孤独な闘いの"寒さ"を。
いいのかな。
頼ってもいいのかな。
泣き言言ってもいいのかな。

