「由香。別にそいつは困ってないみたいだから、諦めろ」
「はあああ!!? 紫堂、なあ紫堂!!! 君の命運は久遠の演技にかかってるんだぞ!!? 矜持なんて捨てて…」
意地でも捨てたくない気がする。
「久涅に感づかれたら、師匠達にも会えなくなるし、神崎にも会えなくなっちゃうかもしれないんだぞ!!?」
――っ!!!
俺は――
頭を垂らした。
久遠に。
屈辱の…懇願の姿勢。
芹霞に会えなくなるのは嫌だ。
皆に会えなくなるのは嫌だ。
その為なら、俺の矜持など。
命すら一度失った身、何を恐れることがある。
"お願いします"
唇を、そう動かした。
「――ふんっ」
まるで表情を変えず、久遠は高飛車な態度のまま、部屋を出て行ってしまう。
そしてひょっこり、顔だけこっちに出して。
「気になるなら、セキュリティ用の…部屋の監視モニタでも、そこで見てれば?」
バタン。
蓮とともに出て行ってしまった。
「素直じゃないな、久遠も」
遠坂がぼやく。
「信じろってひと言言えばいいのに。
初めからそんなつもりだったんだろうよ。
じゃなければ、その布寄越せくらい言うはずだ」
そう苦笑しながら、画面のモニターを切り替えた。

