それを何とか押し殺しながら、
「芹霞、大丈夫。僕達は煌を傷つけたい訳じゃない。制裁者(アリス)から正気に戻らせる一環として…」
芹霞はぶんぶんと頭を横に振る。
「芹霞さん、私も出来る限り…ほんの少し、加減しますから大丈夫です。幾ら芹霞さんに刃を向け、幾ら芹霞さんを追い詰め、どんなに芹霞さんを恐怖に陥れた愚か過ぎる駄犬であろうと、私にも少しくらいの慈悲の心はある…はずですから」
桜…。
余程頭に来ているんだな…。
「違うの…」
芹霞は言った。
震えた声で。
「あたしがね――…
許せないの、この馬鹿犬を」
「「え?」」
僕と桜が同時に声を上げた。
「奴を叩きのめすのは…
玲くんや桜ちゃんじゃない。
――あたしがやりたいの」
「「は?」」
また、僕と桜が同時に声を上げた。
そして、上げられたその顔。
その目は――
据わっていた。
「怖い人も怯える『暁の狂犬』が、何自分見失って…ほいほい言い様に操られてるのよッッッ!!!
制裁者(アリス)だから何よッ!!!?
素人を傷つけるなって、あんなにあんなにあんなに、あたし繰り返し言ってたのもコロリと忘れるなんてッッッ!!!
許さない~ッッッッ!!!
許せない~ッッッッ!!!
奴のなめきった根性――
叩き直してやるッッ!!!」
その姿は、煌に怒る緋狭さんの姿を彷彿させた。
そして芹霞は――
「「ええええ!!!?」」
桜が飲もうとしていた薬を――
自分で飲んでしまったんだ。

