シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



それを何とか押し殺しながら、


「芹霞、大丈夫。僕達は煌を傷つけたい訳じゃない。制裁者(アリス)から正気に戻らせる一環として…」


芹霞はぶんぶんと頭を横に振る。


「芹霞さん、私も出来る限り…ほんの少し、加減しますから大丈夫です。幾ら芹霞さんに刃を向け、幾ら芹霞さんを追い詰め、どんなに芹霞さんを恐怖に陥れた愚か過ぎる駄犬であろうと、私にも少しくらいの慈悲の心はある…はずですから」


桜…。


余程頭に来ているんだな…。




「違うの…」



芹霞は言った。


震えた声で。




「あたしがね――…


許せないの、この馬鹿犬を」




「「え?」」



僕と桜が同時に声を上げた。




「奴を叩きのめすのは…

玲くんや桜ちゃんじゃない。


――あたしがやりたいの」




「「は?」」



また、僕と桜が同時に声を上げた。



そして、上げられたその顔。



その目は――

据わっていた。



「怖い人も怯える『暁の狂犬』が、何自分見失って…ほいほい言い様に操られてるのよッッッ!!!

制裁者(アリス)だから何よッ!!!?

素人を傷つけるなって、あんなにあんなにあんなに、あたし繰り返し言ってたのもコロリと忘れるなんてッッッ!!!



許さない~ッッッッ!!!

許せない~ッッッッ!!!



奴のなめきった根性――

叩き直してやるッッ!!!」



その姿は、煌に怒る緋狭さんの姿を彷彿させた。


そして芹霞は――



「「ええええ!!!?」」



桜が飲もうとしていた薬を――


自分で飲んでしまったんだ。