シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

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「で、どうしよう…ね、煌は」


僕達は、まだびくびくと身体を動かして抵抗続ける煌を上から見下ろした。


「高電圧ではないけれど、微弱ではないんだよね、この力。抵抗すればする程体力消耗するだろうし…こんなに長く意識保っていられるのは流石と言えるけれど」


言葉も出ない状況なのに、威嚇するように下から睨み付ける真紅の邪眼。


「だけど正気に戻るまで、これを解くわけにもいかないね」


解いた途端、きっとこれ幸いと襲いかかってくるだろう。


「しかし…また血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)とはね…」


僕は桜から事情を聞いた。


「黄色い蝶を見れば現われる痣か。何でこのタイミングで芹霞に現われたのか判らないし、桜のそれも…何で現われたんだ?」


「判りません。ただ、2ヶ月前の意味合いはないと…緋狭様も氷皇も言ってました」


2ヶ月前。


この痣は、"生ける屍"の標的の目印だった。


「そして渋谷と同じ、北斗七星…歌う白い女と地面の皹…」


桜が見たという女の落下によって出来た物理的証拠は…折り重なる屍をどければ確かにあった。


皹と言うより…陥没だった。

だが…その原因たるものの痕跡はなく。


そして更に不可解なことは――


「何でこの陥没も、鬼の姿してるんだろう」


芹霞がそう言ったから。

ただ地面がガタガタになっているだけの…歪な外郭が…何で鬼?


それは…芹霞だけしか感じられない感想。


ただの錯覚?

それとも、意味があるのか?


そして――


「何で煌…黄色い外套着て、首を刎ねてたんだろう。そして桜の言葉貰えば…"選別"している、か。直接本人に聞きたいよね、拷問でもかけて。やっぱり…言うこと聞かせるには"恐怖"を植えつけて強引に聞き出すか」


僕は真紅の邪眼を見据えて言った。


「制裁者(アリス)相手に、僕の方法が果たして"恐怖"たりえるか…」


やる時は…徹底的にやりたいけれど。