僕から離れようとしない黒い瞳。
先刻まで…弾いてばかりいたのは、同じ瞳だった。
「……。ええと…」
情けない。
頭が混乱して、言葉が出てこない。
「芹霞…僕を…許してくれるの?」
それが現実に起っていると…
そう思ってもいいの?
恐る恐る…僕は、芹霞の背中に手を回してみた。
僕の手首のバングルが、声と共に震えた気がした。
「許すも何も。それはあたしの台詞だよ。
玲くん、玲くんの事情も聞かずに、一方的に言い捨てて逃げてばかりいた…自分勝手なあたしを許してくれる?」
潤んだ黒い瞳が、下から僕を見上げてくる。
うるうるうる…。
こんな場面だというのに僕は――
「……~~」
熱い顔を隠すようにして俯いてしまった。
一体…
何を考えているんだ、僕は。
落ち着け、落ち着け、僕の心臓。
何で…身体まで火照ってくるんだよ!!!
「玲くんが…
許してくれないッッッッ!!!!
うわああああんッッッッ!!!」
また芹霞が派手に泣き出した。

