「え? えええ!!?
な、何で芹霞、ねえ…ちょっと…」
僕は心ならずも狼狽えた。
何で、何で芹霞が…泣くの?
何で謝るの?
謝るのは僕の方。
芹霞の心を傷つけてごめんなさい。
勝手に嫉妬してごめんなさい。
そして。
僕にプレゼントありがとう。
僕を信じてくれてありがとう。
ああ、まだまだ言いたいことは沢山在るというのに。
何からどう言えばいいのか判らなくなってしまった。
完全に出足を狂わされた僕は、ただおろおろとしているばかりで。
「玲くん、玲くん、ごめんなさあああい!!!
逃げちゃってごめんなさあああい!!!
理解しないでごめんなさあああい!!!
あたし玲くん好きだから!!!
だから玲くん、あたしを嫌わないで!!!」
僕は――
首を傾げてしまった。
何だか――
僕に都合のいい夢を見ているんじゃないだろうか。
生気溢れるこの芹霞は、本物のはずだ。
本物から…僕はこんな言葉を貰えているの?
僕、芹霞を傷つけて泣かせて、笑顔を奪ったのに。
やっぱり…夢?
また僕…変なものに巻き込まれてる?
そう思って、僕は自分の頬を思い切り叩いてみた。
「玲くん!!!?」
「玲様!!?」
…痛い。
力入れすぎてしまった。
「ん……痛みはある。
ということは現実?」
まだ俄には信じがたく。
何処までも疑心暗鬼になっている僕に、芹霞は心配そうに僕を見つめてくる。
先刻まで交差しなかった視線が…重なって、益々絡みついてくるから。
濡れた黒い瞳を斜めに覗き込むと。
芹霞も一緒に顔を傾けた。
反対に顔を傾けて芹霞を見ると、
芹霞も同じ方向に顔を傾ける。

