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僕が外界に出た瞬間。
目の前では――
黄色い布を纏った橙色が、巨大な…長尺の刃物を手にして、小さな青2つに斬りかかろうとしていた。
それが煌で。
武器は…偃月刀の変化したものであると――
悟った僕の思考は、時差ボケのような…軽い体内時計の狂いから逃れ、"現実"を正しい時間進行で認識した。
あの馬鹿、何をやってるんだ!!?
芹霞を庇うように立つ桜。
空気の緊迫感から判る。
桜の武器は、煌を制する効果を出せないのか。
敏捷性を誇る桜が煌に勝れないのは…意外過ぎた。
相手が――煌だからなのか。
僕は思い出す。
制裁者(アリス)の…真紅の邪眼を持つ煌の姿を。
まだ…惑っているというのなら。
それ故、愛する女性と仲間に刃を向けるというのなら。
僕が櫂の代わりに、お前を目覚めさせてやろう。
紫堂の護衛団の…桜の上司らしく、いや…仲間として、力でねじ伏せてやる。
僕はバングルの月長石を指で触る。
よし、いけそうだ。
"まだ"完全には僕の思惑通りにはなっていないけれど。
多少なりとも…コード変換が有効であるのなら。
瘴気に包まれた空間。
此処が何処かは判らないけれど。
僕は――
「いい加減にしろッッ!!!!」
バングルの月長石から引き出した青光を、煌に放ったんだ。
咄嗟にこちらを向いた煌は、身の丈もある偃月刀を薙ぎ、僕の力を2つに叩き斬った。
非物質である力を、物質の…たかが刀如きで凌がれたのは、驚くと共に…屈辱。
だけどそれは、絶望的な諦観ではない。
「玲くんッッッ!!!!?」
「玲様!!!?」
僕は笑みを2人に向けて、そして振り翳される刃物をひらりひらりとよけ、そして…青い光に包まれた手で刃先を摘んだ。
殺気。
叩き斬ろうとする煌と、指先で押さえる僕。
不快そうに細められる真紅の瞳。
ああ、そうだろうね…
屈辱だろう、お前には。

