心が――震えるんだ。
感動?
安堵?
そんな生優しいものじゃない。
黄幡会で櫂の幻覚に皆が惑っていた中、芹霞は本当の櫂を見つけた。
僕は…櫂が羨ましく、そして妬んだ。
僕だったら…見つけて貰えるだろうか。
そう思った。
それは、見つけて貰えないという、諦観の裏返し。
僕は…芹霞を信じていなかったんだね…。
ありがとう、ありがとう芹霞…。
こんな僕を…信じてくれて…。
僕は…欠けたバングルに口付けた。
これならもう…
思い残すことはないよ。
例え――…
一生此処から出られなくても。
此処に取り込まれて、自我を失ってしまっても。
僕は…
いい気分で逝けそうだ…。
――諦めるな、玲。
そんな時だったんだ。
虚数が、突然その数を減じたのは。
出口が…0と1の実数に包まれている。
まるで…塞き止められていたものが溢れたかのように。
「何で突然?」
判らない。
判らないけれど。
これなら…
今なら…
僕は、外に出れる?
そんな時、僕のバングルが小刻みに震えた。
それはまるで天啓のように。
出れる。
僕はそう信じた。
諦めるな。
僕の意識が目覚める。
此処から出てやる。
会いたいんだ。
――あたしはもう…玲くんを見失わないッッ!!!
僕を信じようとしてくれる愛しい芹霞に。
芹霞に会う為に、僕は此処で消えたくない!!!
そして僕は――

