シンデレラに玻璃の星冠をⅡ




まさかね…。


煌が…黄色い外套着ているわけないし。


そして――


「は!!!? 桜!!!? 芹霞!!!?」


まるで煌から逃れるかのように。


ぐるぐる駆け回っている――

青い芹霞を抱き抱える青い桜。


何で桜が青い…制裁者(アリス)の服を着ているのかは判らないけれど。


間違いない。


あれは、僕の知る3人だ。


「煌、桜…芹霞ッッッ!!!」


しかし――

声を上げども届かないようで。


無理矢理歪みから出ようとすれば、虚数に身体を蝕まれ、意識が白くなる。


何で…こんなに虚数が多いんだよ。


このままだと、時間の問題。


そう遠くない時間に、僕は…消滅してしまう。


もう駄目なのか。

取る術はないのか。


僕はもう、諦めるしか許されていないのか……。


ソレガボクツミノアガナイ?




その時だったんだ。


――違う、あれは玲くんじゃないッッ!!!


芹霞の声が響いてきたのは。


それはまるで浴室に響くような反響音。


あの元気の良さは…本物の芹霞だ!!!



――貴方は何処の武士ですかッッッ!!!


桜の声。


武士?

珍しい、桜が芹霞に突っ込むなんて。


僕の…あのニセモノがいるのか!!?


声の応酬は、全て聞き取れるものではなかったけれど。


――あたしは…玲くんを理解したいの。理解しなくちゃいけないの。あたし…玲くんを理解しようとしなかったこと、凄く後悔してるから。


そう芹霞の声が聞こえた時――


――あたしはもう…玲くんを見失わないッッ!!!


僕の目から…涙が零れた。


すうっと。


今日――

僕は何度涙しているのだろう。


だけどこれは、さっきまでの…悲哀や苦痛によるものではなく。


これは――。