まさかね…。
煌が…黄色い外套着ているわけないし。
そして――
「は!!!? 桜!!!? 芹霞!!!?」
まるで煌から逃れるかのように。
ぐるぐる駆け回っている――
青い芹霞を抱き抱える青い桜。
何で桜が青い…制裁者(アリス)の服を着ているのかは判らないけれど。
間違いない。
あれは、僕の知る3人だ。
「煌、桜…芹霞ッッッ!!!」
しかし――
声を上げども届かないようで。
無理矢理歪みから出ようとすれば、虚数に身体を蝕まれ、意識が白くなる。
何で…こんなに虚数が多いんだよ。
このままだと、時間の問題。
そう遠くない時間に、僕は…消滅してしまう。
もう駄目なのか。
取る術はないのか。
僕はもう、諦めるしか許されていないのか……。
ソレガボクツミノアガナイ?
その時だったんだ。
――違う、あれは玲くんじゃないッッ!!!
芹霞の声が響いてきたのは。
それはまるで浴室に響くような反響音。
あの元気の良さは…本物の芹霞だ!!!
――貴方は何処の武士ですかッッッ!!!
桜の声。
武士?
珍しい、桜が芹霞に突っ込むなんて。
僕の…あのニセモノがいるのか!!?
声の応酬は、全て聞き取れるものではなかったけれど。
――あたしは…玲くんを理解したいの。理解しなくちゃいけないの。あたし…玲くんを理解しようとしなかったこと、凄く後悔してるから。
そう芹霞の声が聞こえた時――
――あたしはもう…玲くんを見失わないッッ!!!
僕の目から…涙が零れた。
すうっと。
今日――
僕は何度涙しているのだろう。
だけどこれは、さっきまでの…悲哀や苦痛によるものではなく。
これは――。

