「まさかさ――
そこの大画面に逃げちゃってたりして。
あははははは」
その芹霞さんの笑い声に、私は動きを止めた。
「あはは……って、桜ちゃん、何でそんな真剣な顔するの!!? 冗談に決まってるでしょ!!!」
玲様はあっさり捕まる方ではない。
何より紫堂の…電気の、電磁波の力を持っている。
それが効果がなかったのだとしたら。
打ち消す性質を持つ"無効"か――
同一色に埋める性質を持つ"同期"――。
「無効…
まさか…久涅?」
「久涅? ああ来たけど直ぐ帰っちゃった。桜ちゃんも知ってるんだ? 面白い人だよね、直ぐあたしからかって遊ぶけど」
芹霞さんは――
久涅の記憶も失っているのか。
そんなに打ち解けた顔をして。
――櫂様を追い詰めた張本人なのに。
ああ、櫂様を彷彿させる記憶を丸ごと消してしまったのか。
「Zodiacのライブが始まった時帰ったよ? 何しに来てたか知らないけど」
「その時、玲様はいらっしゃったんですか?」
「うん。玲くんは居て、それで…」
そして芹霞さんは、憂鬱な顔つきをして言い淀んでしまった。
「あたし…早く玲くん助けて、まず謝りたいんだよ」
そう芹霞さんは無理矢理笑いを作った。
何か…あったのだろうか。
そう言えば、芹霞さんは"理解したい"と何度も言っていた気がする。
ああそれより。
玲様の力を無効化できる久涅が居ないというのなら。
玲様が消えた原因は他にあるというのか。
無効ではないというのなら――
「ああ、あたしのニセモノ、とっちめてやりたい」
そういえば、そう言っていた。
芹霞さんのニセモノ…。
それは先程の玲様のような、使い魔の可能性が高い。
それに誘われ消えた玲様。
無効化されていないのに、電気の力が使えなかった玲様。
玲様は、何があっても芹霞さんを置き去りにする方ではない。
きっと…玲様すら予想外のことが突然起こったのだ。

