シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


さすがに煌も痺れをきらしてきたようだ。


左右に小刻みに動けば、さすがの煌も易々と標的を捉えきれないらしい。


戦闘で勝ちに拘りさえしなければ…幾らでも切り抜けられる道はある。


煌と戦わずに居られる方法がある。


「どうですか、芹霞さん。玲様は…!!?」


私は――玲様の気配を感じ取れない。


しかし芹霞さんが、玲様を感じ取られたという事実があるのならば、私はそれを無視してはいけないと思う。


彼女は普通人なれど…緋狭様の妹だ。


「ん…桜ちゃん。この会場にはいるとは思うけれど…此処じゃない。玲くんは…この直ぐ近くの、違う場所にいる気がする」


「近く…後は、大画面の裏しかないですが、先刻は玲様の気配はありませんでしたが…」


「大画面の裏…? あの気分が悪くなる画面の…裏?」


「芹霞さんも気分悪くなりましたか。あの画面と…音楽に」


芹霞さんは少し考え込み、


「桜ちゃん。行ってくれる?

何だか、そこにいる気がする」


「え? だから居なかったと…」


「ううん。居る。あの音楽と大画面の気持ち悪さを隠れ蓑にして。きっと玲くんは…居る」


そうして煌から逃れるように赴いた画面の裏側。

だけどやはり玲様は居なくて。


画面裏は、音響を制御する機械に溢れた狭い空間。


上を見ても下を見ても、人影は全く見当たらない。


そんな中――

芹霞さんは1つをじっと見つめていた。


それは…機械のスイッチが多く貼り付けられた、壁。



「どうしました?」


「うまくいえないけど…あの場所…イヤだ」



そう芹霞さんは顔を歪めて。


真上から煌が振り下ろした偃月刀を避けながら、私もそこを見つめる。


瘴気…?


確かに、瘴気は感じるが…会場内の瘴気に比べれば弱いモノで。


そして突如芹霞さんは叫んだ。



「煌のバーカッッ!!!」