シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


まるで追いかけっこだ。

視界にちらつく橙色と刃物の銀色。


天井から降り注ぐ風と雨が私の髪を揺らす。


煌の動きとタイミングを合わせろ。

煌と…伊達に同じ修業をしてきたわけではない。


目で追えぬなら、心で感じろ。

これだけの殺気を露にしているのなら、容易に気配は捕まえられるはずだから。


緋狭様の元で、何度も・・・私と煌は、"気"をあわせて"同期"させる修業をした。

今思えば、その修業があったからこそ…私は心で煌が感じ取れる。

何でこんな胡乱な男と"合わせ"ないといけないのか、その時は内心不服だったけれど。


中々――

面白いじゃないか。


お前の姫を私が奪い取り、何処までもさらって逃げ続ける。

本来"強奪者"は面構えからしてお前に相応しい役だろうけれど、ミスマッチな配役も、たまには気分がいい。粋というものだ。


こんな時。

こんな殺気と瘴気の中、笑みを浮かべる私もどうかと思うけれど…お前と同調しているのなら、少しぐらい楽天的になってもいいじゃないか。


芹霞さんの"あわわわ"という声を聞きながら、ひょいひょいと避けていく。


不思議と…判る。


心で煌を掴めば、次に如何動くのか…私の心が察するから。


目に頼りすぎたからこそ、煌の動きについていけないというのなら。

私は心を使って、煌を翻弄しよう。


私だって長年、鍛えてきたんだ。


煌に勝る腕力や速度がなくても…小さい故の敏捷性は在る。

偃月刀が振られるその一瞬の隙に、私は動くことが出来るから。


煌の意識を掻き乱せ。

煌に"悟られぬ"ように、意識を撹乱して走り回れ。


まともに相対して、煌を叩きのめすことだけが…"勝ち"ではない。


頭を・・・使うんだ。