――暁の狂犬は…赤き薔薇の刻印を血に染めてます。
――黄色い蝶を見た…少女達を
「……。……まさか!!!
失礼します、芹霞さん!!!」
「え、は? きゃっ」
私は芹霞さんの襟元を広げれば…
あったんだ。
血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)が。
同時に、煌の目が鋭くなった気がした。
これか。
これを狩りたいのか。
だから留まっているのか。
たった1人でも、見逃せないのか。
「芹霞さん、これはどうして!!?」
「判らないの。眠くなって痒くなって、掻いてたらこうなっちゃっ……きゃあああ、桜ちゃん後ろ!!!!」
背後から気配。
私は裂岩糸を投げつけて、煌の足を捉えてそのまま上に持ち上げた。
しかし煌はそのまま宙で一回転をすると、糸を偃月刀で断ち切り、綺麗に着地した。
ならば。
芹霞さんからの注視からそらす為には。
私は、ズボンの太股の布を破く。
「桜ちゃん!!!?」
慌てたような芹霞さんの声が聞こえたけれど、私はそれを無視して煌に見せつけた。
太股の…血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)を。
やはり。
目の色が変わり…殺気。
鳶色の瞳は、剣呑に細められ、ゆっくりと偃月刀が動く。
「芹霞さん僕がここの扉を開けます。だから貴方は外に…」
「外には、此処に居た黄色い蝶が流れて…今頃はッッ!!!」
何てことだ。
彼女の逃げ場がないというのなら。
私は――
こくんと唾を飲み込み、芹霞さんの黒い瞳を見た。
私を縛る…神秘的な黒い瞳を。
「では。僕から離れないで下さい」
そして私は、芹霞さんを両腕に抱いた。
「さ、桜ちゃん!!!?」
――いつもあたしを守ってくれたもの。
「僕が貴方を守ります。
――煌ではなく」
玲様でもなく。
そして――
――紫堂櫂を愛してる!!
櫂様でもなく。
この私が。
――紫堂櫂を愛してる!!
私は――
唇を噛みしめて、床を跳ねた。

