煌は舌打ちをして、私が打ち付けた場所にある…スイッチか何かを蹴り飛ばした。
するとすぐ扉は閉じた。
私を逃さないつもりか…。
ならば、私も覚悟を決めねば。
煌に対して、"敵"だとみなさねば、私の裂岩糸は…効果がないから。
私は深呼吸をして、褐色の瞳を睨み付ける。
途端に、煌の顔が好戦的な色に覆われる。
殺戮の為に生まれた制裁者(アリス)。
主なきはずの今、煌の行動は単独か、それとも誰かいるのか。
何も判らないけれど…それを解明する為には、煌をまず正気に戻さないといけない。
ぶつかりあう腕、そして足。
小さな私の身体は、煌の筋肉で覆われた大きな身体に競り負ける。
早さは…煌の敏捷性に負ける。
だけど負けるものか。
煌の能力を低める薬。
私の能力を高める薬。
そんなものは必要ない。
私は、私自身の力で煌に勝ってやる。
そうではないと――
私が今までやってきた意味がないじゃないか。
強さのみを求めて、自分だけで強さを磨いてきた私。
天賦の才にはどんな"努力"は敵わないと…それはあまりにも酷い。
櫂様が本当に8年前、"努力"により今のようにお強い姿になられたのなら、私だって夢見たっていいじゃないか。
私が憧れる櫂様のように…私だって強く成長したいんだ。
私が私である為にも――
自力で煌に勝ちたいんだ。
そして私は煌と交戦を再開し…大画面の裏側にもつれ込みながら闘っていた。
そこに…芹霞さんがいるとは露知らず。
消えた橙色を追って再び会場に戻った私は…
「死ね」
煌の手の中にいる芹霞さんを見て、全速力で走ったんだ。

