そして煌が動き出すタイミング。
何故、ステージで最初傍観していた?
何故、突如動き出した?
動いたタイミングは、白い女達の落下後。
それを必然とするならば、制裁者(アリス)化した煌は"何に"組み込まれているというのか。
あの白い女達との関係は一体…。
そう…女達の屍に目を向けた私は、驚きで目を見開いてしまった。
ない。
何処にもない。
立て続けにあれだけの数――
落下してきた白い女達の名残が。
「消えた!!!?」
ありえない。
あの皹は…此の場の人間達の骸に埋め尽くされ、あれが現実であったという証拠は何もなく。
まるで悪夢のひとコマのように。
そして私はようやく煌の近くに行くことが出来て。
「煌、いい加減にしろッッッ!!!」
裂岩糸を偃月刀に絡ませたけれど、逆に断ち切られる私の糸。
私はまだ――
煌を敵と見なせないのか。
凄惨な場面は瘴気を生んだ。
密閉された空間に膨張する瘴気に、私はくらりと目眩を感じた。
その中で…喜悦を浮かべて元気に走り回るのは橙色。
瘴気を糧とでもしているかのように。
駄目だ。
煌にこんなことをさせてはいけない。
どんなに駄犬でも
どんなに発情犬でも。
どんなに情けなくて、どんなに愚かでも。
こんな…殺戮者は煌ではない。
そう思ったからこそ、私は執拗に煌の邪魔をした。
もう室内には…立てる人間はなく。
私と煌のみとなった。
煌が残忍な顔で振り返り、すっと身体を消したかと思うと…私は宙に飛んでいて…壁に叩き付けられた。
背中に感じる異物の固さ。
突如中に流れ込む光。
ドアが…開いたんだ。

