シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



そして煌が動き出すタイミング。


何故、ステージで最初傍観していた?

何故、突如動き出した?


動いたタイミングは、白い女達の落下後。


それを必然とするならば、制裁者(アリス)化した煌は"何に"組み込まれているというのか。


あの白い女達との関係は一体…。


そう…女達の屍に目を向けた私は、驚きで目を見開いてしまった。



ない。


何処にもない。



立て続けにあれだけの数――

落下してきた白い女達の名残が。



「消えた!!!?」



ありえない。



あの皹は…此の場の人間達の骸に埋め尽くされ、あれが現実であったという証拠は何もなく。


まるで悪夢のひとコマのように。


そして私はようやく煌の近くに行くことが出来て。


「煌、いい加減にしろッッッ!!!」


裂岩糸を偃月刀に絡ませたけれど、逆に断ち切られる私の糸。


私はまだ――

煌を敵と見なせないのか。


凄惨な場面は瘴気を生んだ。


密閉された空間に膨張する瘴気に、私はくらりと目眩を感じた。


その中で…喜悦を浮かべて元気に走り回るのは橙色。


瘴気を糧とでもしているかのように。


駄目だ。


煌にこんなことをさせてはいけない。


どんなに駄犬でも

どんなに発情犬でも。


どんなに情けなくて、どんなに愚かでも。


こんな…殺戮者は煌ではない。


そう思ったからこそ、私は執拗に煌の邪魔をした。


もう室内には…立てる人間はなく。


私と煌のみとなった。


煌が残忍な顔で振り返り、すっと身体を消したかと思うと…私は宙に飛んでいて…壁に叩き付けられた。


背中に感じる異物の固さ。


突如中に流れ込む光。


ドアが…開いたんだ。