勝手に邪眼に心を囚われて。

勝手に私達から離脱して。


勝手に芹霞さんの敵である黄色い男の姿になって。

何より、あんなに愛する芹霞さんを殺そうとするなんて!!!


芹霞さんの中に或る、煌との8年間の記憶をも殺そうとするなんて!!!


何様のつもりだッッ!!!


本当に叩き殺してやろうと思った。


恵まれている"特別待遇"全てを否定して、

ただの制裁者(アリス)として、二度も芹霞さんの敵に回るというならば。


私が全身全霊をかけて、煌を叩き殺す。


その役目、本気で受けてやる!!!



そんな私を制したのは――



「さ、桜ちゃん…」


芹霞さんで。


震えているじゃないか。

怯えているじゃないか。


それに益々怒りが煽られる私。


だけど――


「さ、桜ちゃん…ま、まず…お、落ち着こう? ね? こ、煌が死んじゃう」



芹霞さんの恐怖の対象は――



――…私?


「さ、桜ちゃん…今まで…抑えてたんだ…。い、いつもの威力より数倍…増し? さ、さすが…団長さん…」


何かぶつぶつと言っているけれど。


あんなもので煌がくたばるはずはなく。



「!!!」


突如、視界が赤く…灼熱の温度に変わる。


「炎ッッッ!!!?」


緋狭様は、煌が今まで繰り出していた炎の力は、煌自身の力だと告げた。


緋狭様の腕環がない今、緋狭様の言葉を証明するように…床に業火が拡がる。


屍が燃えていく。


「芹霞さんッッ!!! 僕に捕まって!!!」


私は力を使えない。


だから上に避難しようとしたけれど、


「煌、やめてッッ!!!

玲くんがいるかもしれないのにッッッ!!!

燃やさないでッッッ!!!」


芹霞さんが叫んだんだ。


「玲様が!!?」


この会場には屍と…瀕死の人間しか居ない。


この中に――

玲様がいるだって!!?