此処は建物内。


雨など入ることはないはずなのに。


あたしは思わず、爪先立ちして天井を見上げた。


照明に邪魔されて確認に時間がかかったけれど…


真上に…光が見える。


割れているのか、歪な形状に見える。


風も感じられる。


どうやら、そこから風雨が吹き込んでいるようだ。


「一体なんであんな高い処が割れるんだろう。黄色い蝶? 真上から来襲してきたんだろうか」


しかし、煌や桜ちゃんの武器も貫通した黄色い蝶が、障害物を破壊して入り込むともおかしな話だ。


そんなことを思っていた時、ずるりと足が滑り。


何と…血の海に転んでしまったあたし。


最悪だ。


一番、やっちゃいけないことをしてしまった。


真紅色が…服に染み付いてしまった。


血って…クリーニングでも落ちないんだよね。


玲くん…何がなんでもあたしこれ買い取るから。

ごめんなさい、分割払いで対応して下さい。


そんなことを考えてしまうのは、現実逃避なんだろうか。


ぬるり。


「うわっ…首からも中に流れ落ちてきた…。ハンカチ、とりあえずハンカチで拭き取らないと…」


あたしは襟元をぐいと広げて、鞄の中入ってある白いハンカチで拭った。


見る見る間に赤く染まるハンカチ。


もうこんなの使えない。


とりあえず、使える処まで使って…


仕方が無いから、此の場でさよならをしなきゃ。



「………」



赤く…染まった布。

ひらひらと揺れる…手の中の布。


何かが…ちらちらと脳裏を掠める。


何かが点滅しながら忙しく走り抜ける。



――がんばれ!!!


あたしの声。


泣きながら笑う…あたしの声。



何?


一体何?