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櫂が逝った。


――お前達に、話しておきたいことがあるんだ。


前もっての、宣言通りに――。


"蘇生"の成功率が、どの程度のものか依然不明なまま。


更には――


――あんたじゃなく、紫堂櫂を愛してる!!!


此の世に未練を残して。



あの時の――


――紫堂櫂を愛してる!!!


芹霞の言葉。



それを聞いた僕の心の衝撃を、どう表現していいか判らない。


横恋慕という邪な想いが、許されないことだと言うことは十分判っている。


それでも――

僕は芹霞が欲しかった。


今まで僕が、"12年の幼馴染"という濃密な関係に打ち勝つことが出来ないでいたのも、十分に判っている。


それでも――

一縷の希望に賭けてきていた僕は――


逆転勝利を夢見てきた僕は――


あの時あの瞬間。


芹霞から出た言葉に、いつもとはまるで違う"心"を感じて…全身の血が逆流しそうになった。


それは芹霞が否定し続けてきた恋愛の情に満ち満ちていて。


それは僕がずっと欲しかったものであり、櫂がずっと望んでいたもので。


あんな時だというのに…


僕は悔しくて仕方が無かったんだ。


妬ましくて仕方が無かったんだ。



どうして、櫂ばかり?


それは抱いてはいけない心情だと窘(たしな)める僕と、駄々っ子のように泣き喚く"僕"。


僕の心臓は…相反した2つの心に責められ、悲鳴を上げ続けた。


壊れるかと思う程の…衝撃に耐えるのがやっとのことで。


もしもこの先…

櫂が芹霞を完全に手に入れるのであれば。


芹霞からの愛を一身に受けるのであれば。


僕はこのまま壊れてしまいたいと思った。


これから…2人が寄り添い、口づけを交わし…そして櫂が芹霞を抱くのであれば。


愛を囁き合うのであれば。


僕は――


この苦痛に…耐えられない。