そんな時――


「あああああああ!!! 

だから、ボクの最終奥義は…"ゴキブリ叩き"だけじゃないんだってッッ!!! そんなの序の口、これからシュッシュとチッチの合体技が…」


画面に白い鳥が飛びまわり…巨大箒が小鳥を弾き飛ばすと、小鳥が突如…巨大な飛龍に変わった。


2Dのアニメから、3Dのリアルなものに切り替わる。


チッチは…龍だったのか!!?

ああ、昔の俺なら…多分今頃、気を失っていた。


いやそんなことより。


飛龍の顔が大きくなり、凄まじい炎を吐いて玲に襲い掛かる。


「今此処でこのタイミングで、裏奥義使ってくれよ、師匠ッッ!!! 判るよな、師匠なら何がベストか判るよな!!? もう裏奥義しかないって判るよな!!?

――なのに何で使わない!!!? …まさか使えないのか!!!? だったら師匠、逃げろ、とにかく逃げてくれッッッ!!! ああ、耐えるな堪えるな、無理だってッッ!!

これは師匠の裏奥義に対抗して、その力を相殺する為だけに…師匠に内緒で密かに育て上げてきた技なんだぞ!!?」


「うわあ、紫堂玲のHPがみるみる間に減っていくぞ!!?」


司狼の声。


決勝戦ということで、通常1段から…5倍の5段になっている玲のHPゲージは早い速度で減っていく。


俺は思わず立ち上がり、食い入るように画面を見つめた。


玲、玲ッッ!!!


「2段になってもまだ減り続けてるぞ!!? 由香、そうだ…画面、画面を消せば…」


蓮が慌てた声を出しながら、大画面の電源を落とそうとする。


「画面を消しても意味ないよッッ!!! オンラインでネットにデータ送られてるんだ、消した画面の向こうで戦いは止まらないよッッ!!! 

……ああ、そうだ、電源…機械自体の電源を消して、こっちからの対戦データ送信を遮断(シャットアウト)すれば…ゆんゆんは消えてくれるッッ!! 電源は…何処にあるんだ!!?」