あの技は――
ゆんゆんの秘技"ゴキブリ叩き"。
ゴキブリ嫌いのゆんゆんが、ゴキブリの魔の手から逃れられなくなったら、突如キレて・・・発動される。
初めてあれを芹霞とテレビで見た時、その…今までのほのぼの系から逸脱した、あまりのギャップの凄まじさに、俺はその場で失神した。
芹霞は――
ゴキブリ嫌いの発端は、菓子と間違えて口にしたどうこう言っているが、それよりも以前に、あの技による心の衝撃が、影ながら作用しているものだと俺は思っている。
それ程、あの"ゴキブリ叩き"は視覚的にも凄いものなんだ。
ああ、そんなことよりも。
玲が、玲がッッ!!!
「紫堂玲のHPメーターが、緩やかだけれど…減っていくッッ!!!」
蓮が叫ぶ。
ゲーム上のHPゲージは…
玲の命のパラメーター。
HPが0になったら恐らく玲は――。
その時画面が黒くなり、そして青く光った。
「師匠、やめろやめろッッ!!! 今此処で、ボクの最終奥義に対抗して奥義を出して威力を相殺しようとしたって、無駄に体力と気力が…あわわわわッッッ!!!」
あの青い光は玲の…紫堂の力なのか?
攻撃系というよりは防御系。
玲からの攻撃はないから、遠坂のHPは減っていかない。
玲は青色の大きな盾のようなもので、"ゴキブリ叩き"を弾いているだけで。
「おかしいな。電脳世界にいる紫堂玲が…独壇場でどうしてその力をフル活用できない? 地味すぎやしないか?」
久遠が腕を組んで画面を見ている。
確かに。
0と1の蔓延る世界は、玲の力の源。
その世界に居て、何故玲はその力を自在に操れない?
こんなものじゃないだろう、玲の潜在能力は。
更にいつも裏奥義を炸裂させて優勝しているのだとしたら、どうして一気に勝負をかけようとしないんだ?
特別な規制でも…あるのか?

