カタカタ、カタカタ。
いや…今順番が逆になった。
パンチとキックの順序は関係がない。
繰り出す攻撃の長さも一定していない。
もしも仮に…信号と捉えるならば。
攻撃の長短で文を作る、モールス信号の類ではない。
だとしたら、考えられるのは。
俺は――
キーボードを叩いた。
"ZERO"の攻撃を0、遠坂の攻撃を…1と考えれば…?
打込んだ画面と、実際のゲーム画面の動きを見比べて、やはり攻撃の応酬がパターン化して繰り返されていることを確認した。
間違いない。
"二進法"で、何かを綴っている。
"ZERO"の誘導だ。
もしこれに言葉としての意味があるならば、送信先はその言語に堪能な、玲の可能性が高い。
玲から…同胞者たる遠坂に何か送られている。
だがそれはあくまで可能性。
俺には、これに意味があるのかないのか、判断出来なかった。
俺はこの"言語"は解読出来ない。
言語であるかどうかも、確認する術がない。
意味があるように思わせて、罠(トラップ)という危険性だってある。
此の場に、即座に確認出来る玲が居ないのなら。
解読出来るのは――
俺はキーを打込んでから、久遠の肩を叩き、
画面を目の前に突きつけた。
ああ、喋れないのは不便だ。
「何だよ、突然…。
"この下のものを遠坂に言え"
…は? これを?」
俺は久遠の肩を揺すって急かした。
「何でこんな長ったらしいのをオレが…ああ、判ったから、胸倉掴むな。
由香、紫堂櫂からの伝言だ。
"相手の動きにメッセージがある。
『000110101110000110110100001011110110011111』を訳せ"
由香、お前こんな二進法、訳せるのか?」
「はああ、突然なんだよ!!?
今、大変な時なんだよ」
遠坂からの素っ頓狂な声が返る。
カタカタ、カタカタ。
俺は更に久遠を急かす。
「由香。早く訳せ、こいつが煩い」
「今、それ処じゃないけど…ああ、もう仕方ないな。
ええと、もっかい久遠。……。悪いけど、もっかい。……。更にもっ…怒るなよ!!! そんな長ったらしい二進法、ゲームしながら片手間に理解出来るもんじゃないだろう!!?」

