シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
カタカタ、カタカタ。



いや…今順番が逆になった。


パンチとキックの順序は関係がない。

繰り出す攻撃の長さも一定していない。



もしも仮に…信号と捉えるならば。


攻撃の長短で文を作る、モールス信号の類ではない。



だとしたら、考えられるのは。



俺は――

キーボードを叩いた。



"ZERO"の攻撃を0、遠坂の攻撃を…1と考えれば…?


打込んだ画面と、実際のゲーム画面の動きを見比べて、やはり攻撃の応酬がパターン化して繰り返されていることを確認した。


間違いない。


"二進法"で、何かを綴っている。


"ZERO"の誘導だ。


もしこれに言葉としての意味があるならば、送信先はその言語に堪能な、玲の可能性が高い。


玲から…同胞者たる遠坂に何か送られている。


だがそれはあくまで可能性。


俺には、これに意味があるのかないのか、判断出来なかった。


俺はこの"言語"は解読出来ない。

言語であるかどうかも、確認する術がない。


意味があるように思わせて、罠(トラップ)という危険性だってある。


此の場に、即座に確認出来る玲が居ないのなら。


解読出来るのは――


俺はキーを打込んでから、久遠の肩を叩き、

画面を目の前に突きつけた。


ああ、喋れないのは不便だ。


「何だよ、突然…。


"この下のものを遠坂に言え"


…は? これを?」


俺は久遠の肩を揺すって急かした。



「何でこんな長ったらしいのをオレが…ああ、判ったから、胸倉掴むな。

由香、紫堂櫂からの伝言だ。


"相手の動きにメッセージがある。

『000110101110000110110100001011110110011111』を訳せ"

由香、お前こんな二進法、訳せるのか?」



「はああ、突然なんだよ!!?

今、大変な時なんだよ」


遠坂からの素っ頓狂な声が返る。


カタカタ、カタカタ。


俺は更に久遠を急かす。


「由香。早く訳せ、こいつが煩い」


「今、それ処じゃないけど…ああ、もう仕方ないな。

ええと、もっかい久遠。……。悪いけど、もっかい。……。更にもっ…怒るなよ!!! そんな長ったらしい二進法、ゲームしながら片手間に理解出来るもんじゃないだろう!!?」