「しかしああ…何でまた、ううっっ!!! ひょえ~ふぅ、危なかった」
遠坂の顔は画面に釘付けで、少し…苦渋に歪んでいる。
しかしキーボードを打つ手の動きは凄まじい。
キーを連打する早さにより、威力が強くなるらしい。
「大分、苦戦しているな」
蓮の問いかけに、遠坂は引き攣ったような声を出した。
「変なんだよ、こいつ。動きが…予想できなくて。どんな相手でも奥義に至るパターンというものは大体決まってるはずなのに、動きが把握できないんだ。だからリズム狂わされて、奥義を出すタイミングまで狂わされ…ゲージは溜まっているのに、技が出せないッッ!!!
"軍神"を保持するアニオタゲーマーを、此処まで追い詰めるなんてッッッ!!! 本当に今回初めて参加した、新人なのかよ!!?」
カタカタ、カタカタ。
「ああ…パンチとキックだけで体力の削りあいなんて、ボク嫌だ~。だけどタイムアウトなんてもっとやだ~ッッ!!! どでかい最終奥義で勝負をつけたいのに~ッッ!!!」
カタカタ、カタカタ。
「由香」
画面を見つめながら暫く黙り込んでいた久遠が、瑠璃色の瞳を細めた。
「お前…今回も優勝は諦めろ。
――…無理だ」
カタカタ、カタカタ。
「ふ、不吉なこというなよ、久遠~。今回逃したら、ボク…優勝の可能性がなくなってしまうんだぞ!!?」
「……。相手の方が、一枚上だ」
「何をもって、そう言う、久遠~!!!」
遠坂は涙声だ。
「相手は奥義なしの基本形のみで由香を追い詰め、更に由香の攻撃は殆ど見切っている。判るか、由香。
対戦相手、"学習"して"成長"してるぞ?」
「はああああ!!?……っと、危ない、やられるトコだった」
"学習" "成長"
それはまるで――

