シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「しかしああ…何でまた、ううっっ!!! ひょえ~ふぅ、危なかった」



遠坂の顔は画面に釘付けで、少し…苦渋に歪んでいる。

しかしキーボードを打つ手の動きは凄まじい。


キーを連打する早さにより、威力が強くなるらしい。


「大分、苦戦しているな」


蓮の問いかけに、遠坂は引き攣ったような声を出した。


「変なんだよ、こいつ。動きが…予想できなくて。どんな相手でも奥義に至るパターンというものは大体決まってるはずなのに、動きが把握できないんだ。だからリズム狂わされて、奥義を出すタイミングまで狂わされ…ゲージは溜まっているのに、技が出せないッッ!!! 

"軍神"を保持するアニオタゲーマーを、此処まで追い詰めるなんてッッッ!!! 本当に今回初めて参加した、新人なのかよ!!?」


カタカタ、カタカタ。


「ああ…パンチとキックだけで体力の削りあいなんて、ボク嫌だ~。だけどタイムアウトなんてもっとやだ~ッッ!!! どでかい最終奥義で勝負をつけたいのに~ッッ!!!」



カタカタ、カタカタ。



「由香」


画面を見つめながら暫く黙り込んでいた久遠が、瑠璃色の瞳を細めた。




「お前…今回も優勝は諦めろ。

――…無理だ」




カタカタ、カタカタ。



「ふ、不吉なこというなよ、久遠~。今回逃したら、ボク…優勝の可能性がなくなってしまうんだぞ!!?」


「……。相手の方が、一枚上だ」


「何をもって、そう言う、久遠~!!!」


遠坂は涙声だ。



「相手は奥義なしの基本形のみで由香を追い詰め、更に由香の攻撃は殆ど見切っている。判るか、由香。


対戦相手、"学習"して"成長"してるぞ?」


「はああああ!!?……っと、危ない、やられるトコだった」



"学習" "成長"


それはまるで――