「師匠居ないのに"ZERO"って何だよ!!? 怖いもの知らずだなあ、こいつ。決勝戦に称号がついていないということは…こいつ新人か!!? 新人が決勝戦まできたのか!!? ぬぬぬぬぬ…。師匠…凄い新人が出てきたよ~。だけど"軍神"、9回の準優勝の名にかけて…行かせてもらいますッッ!!!」
「「もらいますッッ!!!」」
1年で2回の大会って言ってたよな…。
9回目ということは…5年目か?
俺は…5年間も、玲が優勝し続けていたということを知らなかったとは。
「由香、紫堂玲の称号は?」
久遠が聞くと、
「"全能神"!!!」
お前…いつの間に"全能神"まで格が上がってたんだよ…。
『GAME START!!!』
俺はぼんやりと画面を見つめていた。
「強いのかな、強くないのかな。何で奥義出して来ないんだろう」
遠坂がぼやいた。
「決勝戦まで進めてきた実力者が…どうしてパンチとキックだけ?」
画面では…魔女っ娘を相手しているのは"王子"の姿。
「しかも見たことないし、このキャラ。どんな技使うのかわくわくしてるのに…全然使ってこない…」
遠坂が口を尖らせたようだ。
画面の王子が…手刀を入れる。蹴りつける。
何だか――
違和感を感じて。
わざと技を使わないということもそうだけれど、
この王子…動き方が流麗なんだ。
派手な技を使わず、基本的な…地味な攻撃かもしれないけれど、遠坂の攻撃を食らわない。
防御というより…見事に見切って避けている。
その避け方も、舞うように綺麗で。
そういうキャラなんだろうが、何だか無性にひっかかって。
それはまるで――
久遠が言った。
「何だか――
紫堂玲みたいな闘い方するな」
そう、玲のようなんだ。

