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ドドーン。
激しく鳴り響く雷は、僕の慟哭。
あんなに天気が良かったのに――
嵐の最中に、僕達は…僕は居た。
段々と激しさを増す雨。
僕はそこから動けない。
動くことができなかった。
仮面のように感情を殺した顔を向ける芹霞の、その心を解したくて…僕はただひたすら、華奢なその身体を抱きしめていた。
芹霞の雨は全部僕が受けるから、だからどうか芹霞の心を晴らして欲しいと。
そればかりを祈り続けた。
そんな僕に響いた声。
「玲くん…
"お試し"はもう…必要ないよ。
――帰ろう。疲れちゃった」
僕の目から溢れる涙が――
絶え間なく降り注ぐ雨と混ざり…激しく流れ落ちる。
心が痛くて仕方が無い。
呼吸の仕方が判らない。
身体が震える。
これは…発作のせいじゃない。
これは…寒さのせいじゃない。
こんなはずじゃなかった。
僕は…僕から離れようとする芹霞を、抑えつけるようにして強く強く抱きしめた。
「芹霞、好きだよ…」
震えて掠れた僕の声は、雨音に溶けた。
「玲くん、聞こえなかった? "お試し"はもう…」
聞こえない。
「僕は、君が…好きで好きでたまらないんだ」
「玲くん、こういうことはもうやめに…」
何も聞こえない。
僕は聞こえてないフリをして、嗚咽を漏らしながら愛を囁く。
「君は、僕の…恋人なんだ、芹霞」
「だから玲くん…」
どんなにみっともなくても。
「好きなんだ…君しかいないんだ」
どんなにうざがられても。
僕は――
まだ引けないんだ。
諦めたくないんだ。

