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そう。
僕は嫉妬に取り憑かれていた。
完全に状況が把握出来ていなかった。
瘴気に包まれていた此の場所に、1人にしてしまった芹霞。
人為的な攻撃から、芹霞を救ったのは僕じゃなく。
その間に久涅と芹霞の仲は深まり…"同棲"話。
芹霞が…僕から離れて行くように思えて。
――紫堂櫂を愛してる!!
僕は…久涅の姿は櫂にしか思えなくなっていた。
芹霞は、僕ではなく――
櫂と愛を育もうとしているのだと思った。
どんなに記憶を無くしても、惹かれるのは櫂だけだと。
ああ――
時間が巻き戻せるのなら…
嫉妬に狂った僕を殴り飛ばしてやりたい。
よりによって僕は、芹霞からの心を自分で地面に叩き付けた。
芹霞の目の前で。
いつもの僕なら、そんなことはしなかっただろう。
僕が憤った…青い包みが芹霞の傍らで破かれていたのに気づいたろう。
そのバングルに、僕の守護石がついていたことにも気づいたろう。
仮に芹霞が久涅にプレゼントしたとしても、それを久涅が僕に寄越すわけがないと…気づいたはずだった。
だけど僕は…何も気づけなかった。
言い訳が許されるのであれば――
僕は、"錆びる"という言葉に激昂したんだ。
僕の想いまでが穢された気になったんだ。
我武者羅にしがみついた"次期当主"。
同様に僕だけがしがみつく"お試し"。
とにかく必死に、芹霞の愛に縋る僕を――
笑われて馬鹿にされた気になったんだ。
――紫堂櫂を愛してる!!!
櫂に――。

