その時、芹霞の様子に気づけばよかったんだ。
だけど嫉妬に狂った僕は、自分のことに手一杯で。
どうしても僕との愛の証を拒むというのなら。
無理矢理にでも縛り付けてやる。
それは"僕"が目覚めた瞬間。
"僕"は店内を見た。
店内には…喧しいカップル。
欲しい女と、買えない男の群れ。
女の望み通りに出来ない男達は…女に愛想をつかれていく。
欲しいものを与えることで、男が"愛情"を得られるというのなら。
そんな簡単に、欲しい"愛情"が手に入るというのなら。
――何? もっと高い物が欲しいの? じゃあ強請(ねだ)ってみてよ、可愛く。
止まらない。
――君が欲しいものは何でも買って上げるよ? 世界で1つしかないものがいい? 買って上げるから…だから強請ってみてよ、僕だけに!!!
"僕"と僕の独占欲は止まらない。
僕には貰えない…芹霞からのプレゼント。
嫉妬が止まらない。
――僕といるのに、違う奴を考えるなッッ!!
それは願いであり、懇願であり…本心。
僕は真剣に"お試し"に賭けている。
片手間に"遊んで"いるわけじゃない。
真剣なんだ。
真剣故の怒声。
もう笑みなど浮かばない。
余裕なんてない。
僕は芹霞を手に入れたいんだ。
僕を愛して貰いたいんだ。
芹霞以外を愛したくない。
子供なんて欲しくない。
焦っていた。

