悔しい。

悔しい。



私の動きが止まれば、煌は…惨劇に真紅色を添えに走る。


瞬時に切り刻まれる胴体。

そして私は見たんだ。


被害者の身体には…

血色の薔薇の痣。


それは首元であり手の平であり足だったりして、発現場所は一定していないけれど。


真紅色は、薔薇の花弁のように散っていく――。



やはり、煌は…"これ"を狩っているのか!!!?

無差別ではなく!!?



ゴロゴロゴロ…。


雷鳴が轟き…ぽたぽたと雨が降り始めた。



そして煌は、ぴくっと顔を1点に向けた。



その先には何もなかったけれど。

だが煌は…目を細め、そちらに走ったんだ。


偃月刀をピアスに戻し、凄まじい早さで走り去る。


だから私は追いかけた。


嫌な予感がしたんだ。


煌を追いかけることに夢中になっていた私は、気づいていなかった。



ビルから落ちた女の屍が

消えていたことに。


そして――


まだ煌の手が伸びず、目を抉られたままの少女も、

煌が小さい偃月刀で首を刎ねた者も、

巨大な偃月刀の犠牲になった者も、


悉(ことごと)く――消えていたことに。



更には――


地面の…陥没の形状。


もしそこに芹霞さんが居たら、

その皹の形を見て、渋谷の時と同様…きっと言ったであろう。



"鬼"



――と。