何だ?

この瘴気…


段々と濃くなり、大きくなる。


何かが移動しながら、瘴気を膨張させているような。



「ぎゃああああああ!!!」



身構えた私の耳に届いたのは、甲高い声音絶叫。


慌てて振り向いた私の目に映ったのは、

真紅色の液体を迸(ほとば)らせる少女の姿。


そして連鎖的に混乱する人々の姿。


私が瞬時に思ったのは…

何故突然こんなに人が湧いたのかということ。


電話中には感じ得なかった群衆の気配が、どうして今、視界の中で、元々あったというような形で存在している!!?


電話に夢中になりすぎて、見えてなかったのか?


ああ、だけど…今はそんなことより。


真紅色の発現元が、"両眼窩"ということを注視せねば!!!


"目が抉られている"ということは――



「黄色い蝶が飛んでいるのか!!!?」



だけど私は見ることが出来ない。


あちこち響く悲鳴を耳にするだけで、鈍色の空に舞う黄色を見つけられない。


何でこんな処で!!?


突如湧いた疑問。


いつもいつも黄色い蝶の出現場所には、芹霞さんが居た。

元々彼女が、危険な"黄色"に誘われ、その渦中に居たのだ。


だとすれば今この事態は。


この不可視な黄色い蝶は――

芹霞さんとは無関係に、無差別に狙っているということか!!!?