Zodiacの音楽の色が変わった気がする。
元々そんなに歌唱力はない歌手だったが、それを機械音で隠すような…そんな曲調。
だからこそ人気が出てきたのだろうか。
自らの歌唱力を封印して人気が出るなど、愚の骨頂だ。
ゴロゴロゴロ…。
雷の音がした。
空を見上げれば、今にも雨が降り出しそうな色合いの雲に覆われている。
何だか芹霞さんの泣き顔が思い浮かんだ。
大丈夫、玲様は芹霞さんを守ってくれている。
私は――
彼女を守る騎士(ナイト)ではない。
それは――
違う人達の役目。
胸がぎゅうと締め付けられる程、酷く痛んだけれど。
私は…動いてはいけないということを、心得ているから。
私の全ては、櫂様と玲様の為に。
芹霞さんに捧げてはいけない。
私は空を睨みつけて、深呼吸をした。
嫌な予感がするのは…きっと七瀬紫茉の不穏な言葉のせい。
芹霞さんのことは玲様に任せて、私は…煌を見つけ出さねば。
さあ、何処に行こう。
そう思った時だった。
瘴気が膨れあがったのを感じたのは。

