『桜……』


戸惑ったような七瀬紫茉の声が聞こえる。


『あたしが…考えなしのようだった。すまない』


彼女が悟ったのは、私の事情か。

それとも…櫂様が死んでしまったと…思ったのか?


私は――追及すら出来ない。



『芹霞の記憶は戻ったか? 芹霞の身に何か起きてないか!!?』


どうして…そんな悲痛な声で、聞いてくるのか。



『実は――


芹霞が危ないかもしれないんだ』



それは唐突に。



「危な……い?」


『例の…イチルのブログ"CARCOSA(カルコサ)"。

今、芹霞の占星術(ホロスコープ)が掲載されている可能性が高い』


どくん。


心臓が嫌な音をたてた。


「どうして芹霞さんのだと!!?」


『ブログで掲載されるものは匿名やイニシャルが多いのだが…今回更新されたのが「神崎芹霞 7月20日生 17歳 東京 女性」と明記された。

勿論同名の可能性もあるが…あいつの名の漢字の組み合わせはそう滅多にいるものでもない。更に誕生日まで同じだというと…不安は拭えない』


「紫茉さんは芹霞さんの誕生日を?」


『ああ、渋谷で会った時に、自警団に啖呵切っていたからな。

ブログに掲載されてる人間は殺される。

だからあたしは…』


心配だったのだろう。


『…あたしの友達の後輩の楓まで…結局死んでしまったのなら、警戒に…』


楓とは…桜華で襲われていた女生徒ではなかったか。


「死んだ!!?」


思わず携帯を握り締めた。