玲くんは条件反射でそれを掴んだ。
本来の持ち主に帰ったそれは――
「いらないよ、こんなもの!!!
僕を――
馬鹿にするなッッッ!!!」
声を荒げた玲くんその人に…
地面に叩きつけられたんだ。
ガキーン。
バングルが…悲鳴を上げ、転がった。
同時に――
あたしの心も悲鳴を上げた。
"こんなもの"
"馬鹿にするな"
玲くんの声が反響する。
「それより、芹霞…」
"こんなもの"
"それより"
少し…欠けてしまった月長石。
あたしの玲くんへのプレゼント。
"こんなもの"
"こんなもの"
否定されたあたしの心。
行き場をなくしたあたしの心。
優しい玲くんから、いらないと投げつけられた。
玲くんとのぬくぬくとした思い出。
大好きな玲くんとの今までが。
「芹霞…もっとよく話がしたいんだ。
僕の態度が誤解を招いたなら謝り…」
玲くんの声が遠くに聞こえる。
苦しい。
――いやああああああ!!
苦しいのは嫌だ。
――目を開けてよおおお!!!
ああ…あたしの周りには誰もいない。
1人、また1人と…いなくなっていく。

