鳶色の髪。

鳶色の瞳。

青い出で立ちの王子様。


間違いなく紫堂玲その人は、青ざめた顔に汗をかきながら…久涅の前からあたしを奪い取るようにして、間に入った。


「何でお前が此処に居る!!!?」


それは警戒というより怒り。


くるくる、くるくる。


久涅はにやりと笑いながら、バングルを回し続ける。


「随分と必死なことで、次期当主」


「お前には関係がない」


「関係ない、ねえ…? こんな瘴気の中から、愛しい愛しい姫を守っていたんだがね、オウジサマ?」


「瘴気…?」


「これだけのものに囲まれていながら、気づかなかったのか? 

それで芹霞を守ろうなど…笑止。

どうだ、俺に騎士(ナイト)役を奪われた感想は」


ぎり。

玲くんが歯軋りする音が聞こえた。


どうしてこの人、玲くんに喧嘩腰になるのかな。


「俺が居なかったら、芹霞はどうなっていたと思う?

今頃…」


「何か…あったのか!!?」


あたしに振り返った、悲痛に歪んだ端麗な顔。


苦痛。

後悔。

憤怒。


多分――玲くん自身に対して。


今居る玲くんは、"氷の次期当主"ではなく…あたしは少しほっとした。


「久涅が大げさなだけよ。…ナンパされそうな処を守ってくれただけ」


あたしは笑って言った。


「ナンパ!!?」


途端、何故かあたしを睨みつけてくる玲くん。


憤怒の感情の矛先は――あたし。