何を言ってるんだろ、この人。

それでもその表情には、笑いは見えない。


「仮にあたしが服を切り裂いて、久涅の手首に巻き付けたとして」


あたしは首を傾げた。


「あんた…ただの変な人だよ?

そんな布を巻き付けて喜ぶなんて、おかしいよ?」


久涅は何も答えず、ただ手を出すばかりで。

引っ込める気もないようだ。


反対側の手では、玲くんのブレスレットをまだくるくるくるくる。



「代わりでいい。

だから寄越せ、お前の"心"」



久涅の顔は至って真剣だった。



――…ちゃあああん!!!



「…どうした?」



――…ちゃあああん!!!



「…芹霞?」



――あたしは、



「おい、顔が真っ青だぞ!!?」



――神崎芹霞は、





「芹霞に触れるな、久涅!!!」




玲くんの乱した怒声に…


あたしは現実に返った。