「ないわよ、買ってない」
すると久涅の顔が不機嫌になっていく。
「何であたしが久涅に買わないといけないの?」
「何で玲には買うんだ?」
同列に考えているのが面白い。
「あたしはそんなギラギラした金は嫌いだし「買おうとしてなかったんだな?」
「第一あたし貧乏だし「全然考えてなかったんだな?」
「ううっ…「買ってないなら…」
久涅は右手を出した。
「???」
「お前の服切り裂いて、俺の手首に巻き付けろ」
多分――
あたしの眉間には深い皺が寄ったと思う。
「それで許してやる」
「許してやるって言われても…大体これ、高価な服だし」
「どうせ玲から貢がれたものだろうが」
「貢ぐって…違うわよ!!! あたし分割払いを頼むんだから!!」
そう言ったら、久涅に爆笑された。
「やはり欲しいな…」
「あたし…あんたの趣味についていけないかも…」
チンピラ紛いだし…。
アクセサリ…ぎらぎらだし。
それなのに…布?
布巻きつけて嬉しいの?
「今つけてるこれは――
身を守る虚飾だ」
「はい?」
「だから俺は……」
また手首を見せる。
「お前からの…真実の"想い"で守られたい」

