シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「だが、心は判らないでもない。紫堂に…"あいつ"に振り回される心はな」


遠くを見つめ、細められた漆黒の瞳。


「"あいつ"?」


久涅は答えず、代わりにあたしの鞄から雑誌を取り出した。


「何で人の鞄から次々にモノを盗む!!!」


あたしは雑誌を取り返す。


「紫堂の家を出るのか?」


固い声だった。



「うん。玲くんの温情にいつまでも甘えていられないし、バイトでもしながら…あ、そうだ。家決まったら、保証人になってくれない?」


本当は玲くんに頼むのがベストだろうけれど、何だか言いづらい。


いいやこの際、成人してれば誰でも。


「ふうん? この俺に、"借り"を作るんだな?」


「なにその顔。い、いいよ…違う人に頼む」


「保証人がいらない物件があるぞ。

広い間取りに素晴らしい景観。

更には家賃は無料だ」


「本当!!?」


「俺と、いい場所に暮らせばいい」


途端にげんなりして項垂れた。


「ごめん、今…久涅のジョークに笑ってられる余裕ないんだわ」


「ジョーク? どこら辺が?」


玲くんへのバングルを人差し指でくるくると回転させた。


「はあ!!? って、ちょっ…乱暴に扱わないでよ!!!」


しかしあたしの伸ばした手は、久涅に届かない。


くるくる、くるくる。


「なあ、俺のは?」


それは突然。


「俺のだ」


切れ長の…流し目を寄越された。


くるくる、くるくる。


「は?」


手を広げられる。

どうやら…アクセサリーのことを言っているらしい。

土産を寄越せと言うのか。