シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
「で、たかが何百万の指輪如きで、玲から離れようとしてるのか。あんなに気持ち悪いほど"べったべた"していながら」


"たかが"

こいつも生粋の坊ちゃんだ。


何か…酷く嫌そうな顔で、"べったべた"と強調されたような。


「別に"べったべた"だけがあたし達の間柄じゃないもの。より長く続けていける方法が、"べったべた"じゃなかっただけよ。別に絶縁するわけじゃないんだし、今は前とは立場が違うから…少し距離置いて、"べったべた"のない…よりよき付き合い方法を探すのがいいと思うんだ」


釣られてあたしも"べったべた"ばかり。

あまり"べったべた"口にすると、お風呂入ってさっぱりしたくなる…汚らしいもののように思えて、表現を可愛らしい"べたべた&ちゅっちゅ"にしようと提案したら、即効怒鳴られた。


「何が可愛いだッッ!!! お前俺を馬鹿にしてるのかッッ!!? これ以上腹立たしさに火をつけるなッッ!!!」


「何で怒るの? "べったべた"よりいいと思うけどな、"べたべた&ちゅっちゅ"。可愛いじゃない、"べたべた&ちゅっちゅ"」


「……。もうお前には"嫌味"などという高尚なものはくれてやらん。この俺を"無効化"しやがって…」


何だか機嫌が悪くなっちゃった。


ちっちちっち続けられる舌打ち、聞き流そう。


「俺のようにずっと…門前払いくらってばかりなのと、一度受入れられて拒否られるのと…どちらが残酷なんだろうな」


だから、唐突に言葉になったものを聞き逃してしまった。


「は? 何か言った?」


「……。玲も…肝心な処で抜けまくる不器用な奴だから、"あいつ"の影に振り回されてるんだろう。自分で墓穴掘るとは、なかなか愛嬌のある」


「……」


「何だ、その顔は」


「いや…意外と、玲くん"好きっ子"なんだね。だったら…」


「馴れ合う趣味はない」


きっぱり言い切られてしまった。