「で、たかが何百万の指輪如きで、玲から離れようとしてるのか。あんなに気持ち悪いほど"べったべた"していながら」
"たかが"
こいつも生粋の坊ちゃんだ。
何か…酷く嫌そうな顔で、"べったべた"と強調されたような。
「別に"べったべた"だけがあたし達の間柄じゃないもの。より長く続けていける方法が、"べったべた"じゃなかっただけよ。別に絶縁するわけじゃないんだし、今は前とは立場が違うから…少し距離置いて、"べったべた"のない…よりよき付き合い方法を探すのがいいと思うんだ」
釣られてあたしも"べったべた"ばかり。
あまり"べったべた"口にすると、お風呂入ってさっぱりしたくなる…汚らしいもののように思えて、表現を可愛らしい"べたべた&ちゅっちゅ"にしようと提案したら、即効怒鳴られた。
「何が可愛いだッッ!!! お前俺を馬鹿にしてるのかッッ!!? これ以上腹立たしさに火をつけるなッッ!!!」
「何で怒るの? "べったべた"よりいいと思うけどな、"べたべた&ちゅっちゅ"。可愛いじゃない、"べたべた&ちゅっちゅ"」
「……。もうお前には"嫌味"などという高尚なものはくれてやらん。この俺を"無効化"しやがって…」
何だか機嫌が悪くなっちゃった。
ちっちちっち続けられる舌打ち、聞き流そう。
「俺のようにずっと…門前払いくらってばかりなのと、一度受入れられて拒否られるのと…どちらが残酷なんだろうな」
だから、唐突に言葉になったものを聞き逃してしまった。
「は? 何か言った?」
「……。玲も…肝心な処で抜けまくる不器用な奴だから、"あいつ"の影に振り回されてるんだろう。自分で墓穴掘るとは、なかなか愛嬌のある」
「……」
「何だ、その顔は」
「いや…意外と、玲くん"好きっ子"なんだね。だったら…」
「馴れ合う趣味はない」
きっぱり言い切られてしまった。

