"血染め石"
心臓が波打ったのは、きっとその名前のせい。
「ま、また…凄いお名前の守護石で…。どんな石? いつも携帯してるんでしょ、見せてよ」
「……。無い」
「え? 無くしたの?」
「違う。奪われたんだ」
そう、何故かあたしを睨みつけてきた。
「誰に?」
「俺と…同じ天体配置を持つ奴に」
天体配置?
「吸い取られたんだ。俺の人生は」
「は?」
何を言っているのかよく判らん。
久涅は、玲くんのバングルを指で触りながら、薄く笑った。
「お前からは銀の…月長石のバングル。で、玲は何百万のダイヤか何かの指輪を買おうとして、その価値観の違いに仰天したお前が飛び出してきた訳か」
「そうなの。
――…って、何であんたがそれ知ってるの!!?
というか、何百万の指輪!!!?」
「何だ、知らずにあの店に入ったのか」
あたしはぶんぶんと縦に頷いた。
そりゃあ…彼氏さん、青ざめて震えるわ。
というか、よくそんなの強請(ねだ)れるね、彼女さん…。
此の際、久涅がストーカーしていたことは不問だ。
玲くん…何を買おうとするのよ…。
世間知らず?
ただのセレブ?
益々溜息しか出てこない。

