シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「どうだ? 玲なんかやめて――

俺にしないか?」



突然、向けられた切れ長の目。


「俺を選ぶなら、後悔はさせないぞ。ベッドの中でも幻滅させない」


そこには熱が籠もっていて。

玲くんのような"とろり"を感た気がして、それはありえないと頭を横に振る。


それをあたしの返答と見た久涅は、


「何で俺をそこまで拒むんだ、お前は」


機嫌を損ねたらしかった。


本当にどうしてこの人、いつもそっち方面でからかうんだろう。


「拒むも何も…あたしはそんな口車にほいほい乗る女じゃないし。"買って上げれば"言うこと聞くようなお手頃女じゃないし」


言って――

玲くんを思い出して嘆いた。


玲くんはそんな人じゃないと信じたいのに信じられない自分がいる。


"買って上げるから"


冷たく言い放たれたあの言葉は、

あたしの心を突き刺す…禁忌の単語らしい。


そんな時、久涅からびりびりという音がして。


「や、やだ、何勝手に開けてるのよ!!! それは…玲くんへのプレゼントで…ちょっと!!!」


「このシールがまず気に食わん」


ごもっとも。


じゃなくて!!!


「何だ、紫堂の次期当主に…"銀"か」


ぐさりと心に突き刺さる。


「月長石…あいつの守護石、か…」


何だか…羨ましそうに聞こえたのは、気のせいだったんだろうか。


「そう言えば…久涅の守護石って何? 煌も桜ちゃんもあるんだから、直系の久涅が持っていないわけないでしょう?」


「……」


「まさか玲くんと同じとか?」


「一方が生きている限り、

同じものはもてない決まりだ」


端正な顔が翳っている。


「久涅――?」


「俺のは……」


久涅は、天を振り仰ぐように顔を空に向けた。

今にも…裂けそうな、厚い雲の空を。


そして――



「血染め石(ブラッドストーン)だ」



射るようにあたしを見た。