シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「で、どうだったんだ。麗しの"玲くん"との"お試し"は」


突然、そんなことを聞いてきた。

何だかこの人には、筒抜けらしい。


いつ、"お試し"のことを知ったのだろう。


「その面見れば…結果は判るがな。

玲如きでは、お前を満足させられないんだろう?」


「…違うよ。あたし如きが、玲くんを満足させられないんだよ」


久涅は薄く笑った。


「何だ…珍しく逃げ腰か。玲はそれに納得したのか?」


「すると思うよ。…住む世界が違えば、どうしようもないじゃん」


久涅は鼻で笑った。


「住む世界…ねえ。俺に平気で噛み付いて啖呵を切る程、威勢のいいお前が…そんな殊勝なことを言い出すとはな。だからきっと嵐が来そうなんだ」


くつくつ。


何て失礼な男!!


そう思いながらも…


ああ、そうだ。

こいつも紫堂の坊ちゃんだ。


しかも血筋は玲くんよりもいいはずで。


本来なら久涅との方が、住む世界が違うのか。


だけど何だろう、彼は紫堂の世界には馴染まない気がする。


どちらかといえばあたし側の…似て非なる別世界。


「ほ、ほぇあ~あ~ゆ~ふろ~む?」


何故か口に出たのは怪しい言語で、久涅に思い切り顔を顰められた。



「…Japan」


流暢な単語1つで終わってしまった。


何か…寂しい…。


「本当に変な奴だな、お前は…」


思い切り不審者扱い。


もういいの、放っておいて。あたし、疲れてるの。


そしてふと気になった。


――俺に平気で噛み付いて啖呵を切る程、威勢のいいお前が…そんな殊勝なことを言い出すとはな。


「あたし、いつ久涅に啖呵切ったっけ?」


きょとんとして聞けば、久涅は笑うだけだった。


少し沈黙が続き、冷たい風が前髪を揺らした。


不思議と、こうした沈黙が気にならない。


何だか、昔から見知った人みたいだ。

5日前に初めて会った人なのに、凄く話しやすい。


外見はチンピラなんだけれど、人ってみかけによらないや。