「え…何で此処に? あ、デート中?」
きょろきょろ探すが、久涅の近くに女性の影はいない。
「何が暢気に"あ、デート中?"だ、この阿呆がッッ!!!」
怒鳴られた久涅に――
「――!!!?
な、なにひゅんの~!!!」
両頬を思い切り横に引っ張られた。
「いひゃい、いひゃいッッ!!」
苛立った端正の顔。
その行為。
何かが記憶を刺激したけれど…直ぐに消えた。
多分――朱貴を思い出したんだ。
「こんな男を漁るような格好して化粧して、いい年して玲とべたべたべたべた…羞恥という言葉を知らんのか、このミジンコ脳…いやミジンコで十分!!!」
カチン。
「ひゅうひ!!? くひゅみにいふぁれひゃひゅなひ。みじんほなんへ、ひひゅれーな」
「きっちり発音しろ!!! 歯抜けのババアが」
カチン×2。
「あらひはまら、ひしひしろ、ひゅ~ななひゃい、へ・ふ・ッッ!!!」
「だからきっちり発音しろッッ!! 何が"あたしまだ、ぴちぴちの、17歳、で・す"だ!!! お前はただ歳食ってるだけのミジンコだッッ!!!」
きっちり聞こえてるじゃん…。
「何でお前はこの時期に、玲から離れて1人になってのこのこのこのこ…。おかげで俺が出てくる羽目になったじゃないかッッ!!!」
んんん??
この人、何に怒ってるの?

