何だか心が痛い。
いままでくっつきすぎていただけに、離れたら…あの温もりが恋しくて。
だけどそれを求めたら駄目だと思う。
その線引きはきちんとしなきゃ。
そして玲くんと、新たな関係を築いていこうと思った。
世界が違っても…絶縁だけはしたくはなかった。
あたしは玲くんが大好きだ。
恋人として近くにいれなくても、理解者として傍にいれたらと思う。
あたしが玲くんという存在を理解しきれていないというのなら、もっともっと玲くんを理解したいと思った。
多分、それすら図々しいことなんだろうけれど…影ながらでも、玲くんの危機には駆け付けられる存在でいたい。
あたしは今まで、玲くんから多くの愛情を貰ったから。
それを返すのは…道理だと思う。
それだけは許して貰いたい。
そんな時、
「ねえ彼女~フラれちゃったの~?」
何とも軽薄そうな男がへらへら笑って、勝手に隣に座ってきた。
「実はさ、俺もそうなんだよね~。失恋で傷心なんだよね~」
失恋…なんだろうか。
確かに、喪失感はあるけれど。
「傷心者同士…慰め合わない~?」
と、肩を抱いてきた。
ぞわぞわと鳥肌がたったあたし。
瞬時に発動される怒りの鉄拳――
のはずが。
「失せろッッ!!!」
突如割り込んだ…空気を震わす怒声に、殴る対象を無くしてしまった。
「付け入る隙を見せるな、小娘」
軽薄男を威嚇だけで追いやったのは…
「久涅…?」
間違いなく、紫堂久涅だった。

