シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



王子様は相応しいお姫様を迎えに行く。

御伽噺どおりに。


それがあたしではなかっただけのこと。


それに対して"失恋"を味わう前に、こんな虚しい"お試し"はやめなきゃ。


玲くんに依存しすぎていた自分を、立て直さなきゃ。

玲くんが居なくても大丈夫なあたしにならなきゃ。


「自立しなきゃ…な」


そうぼやいた時だった。


「自立には、お引越しが一番ですよ~」


目の前の青い制服を着たにこやかな女性が、手にしていた雑誌を差し出した。


『幸せの斡旋者(煽り用)☆』


雑誌には…『快適な1人暮らし』と大きな題字が。


「新しい門出に、乾杯~」


そう言うと去っていった。


緋狭姉と煌と暮らしていた神崎家は、火事にて崩壊。

あたし以外は行方不明。


あの楽しかった日々は…戻らない。


玲くんとの思い出同様、戻ってこない。


「転機…なのかなあ」


環境を変えて、1人で生きれるようにしないといけない…そんな時期なのかもしれない。

雑誌をパラパラみても…余り実感がわかない。


あたしが1人暮らしね…。


昔から騒がしい環境だったから、1人というのは想像できなくて。


「いいや、後で見てみよう」


あたしは鞄に丸めて突っ込んだ。