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何だか玲くんお疲れのようだ。

お疲れながらも…気怠げに髪を掻き上げるのは、美しい以外の何物でもないけれど。


「何で此処まで…ソッチ系に流そうとするのかな…」


何を言っているのかまるで判らない。



だけど1つ判ることは。


ここの処鬱々としていた表情が消えているということ。


今、にこにことは縁遠い…疲れた表情だけれど、紫堂本家に居た時とは違う疲れ方だ。


もしも…蒼生ちゃんを良い人だと考えれば。


無理矢理に考えてみれば。


玲くんのストレスを発散させてあげたかったのではないだろうか。


玲くんは、蒼生ちゃん関係には素直に噛み付くから。


そして出てくるのは、玲くん自身の表情で。


例えその感情が"嫌悪"だとしても…いや、嫌悪だからこそなのか。"我慢"の余裕すら無くなった、剥き出しの表情は…何だか新鮮に思えるんだ。


いつもの…包み込んでくれる大人の優しい玲くんも好きだけれど、こういう表情を見せてくれる玲くんは、いつも以上に凄く親近感がわいてしまう。


何だか、同い年みたいにね。


「……どうしたの、芹霞?」


思わずあたしは笑ってしまったらしい。


「ん? 今日は色々な表情の玲くん見れたなって」


すると玲くんは、ぷくうと膨れた。


「終わってないよ、芹霞。まだまだ!!!」


玲くん心臓病あってお疲れなのに、凄いバイタリティだ。


突如立ち上がり、恋人繋ぎをしてお店に入った。