例えば――…
『幸せの撮影者(証拠用)☆』
写真を撮ってくれるという男女2人組。
全身青尽くめで青いカメラを持ち…あたしは甲高い声で喋るピンク色の夫婦を思い出した。
――は~い。では恋人同士の熱烈ちゅうをして下さい。はい、こうして突きだした舌を、ゆっくりと絡ませて…。
…突如、艶めかしい実演を始めて固まるあたしの前で、玲くんは青いカメラを取り上げて地面に叩き付けると、あたしを連れてスタスタと歩き出した。
次は――…
『幸せの配給者(確認用)☆』
透明な小袋にお菓子を入れて配っていた綺麗な女性。
何故か青いレオタードで、ぼんきゅっぼんのお姉様。
――色々な味と大きさをお楽しみ下さいネ~。
袋を見ると、4cm四方の四角い銀色の…然程の厚みのない包みが沢山入っていて、表には色々な果物の絵が描いてある。
――玲くん、玲くん!!! お菓子貰った、一緒に食べよう?
玲くんには「大きめ」って書かれてある林檎の絵柄のものを上げて、あたしは「普通」って書かれてある桃のを食べようとした。
クッキーかな?
飴かな?
なんかぐにゃぐにゃしている気もするから、グミかな?
玲くんも怪訝な顔をしながら、銀の袋の上から指先で中身を確認していたようで…そして何かを悟ったかのように、突如倍速のスピードで封を切った玲くん。
そんなにお菓子が食べたかったんだねって笑いながら、あたしも封を切ろうとしたら。
――芹霞、絶対絶対開けないで。
苛立ったような玲くんの声に制された。
そして小袋からひらりと落ちた青いメモ。
『ご使用は、計画的に☆』
――使用? これ、食べ物じゃないの?
玲くんは無言で、あたしからお菓子を取り上げて、ゴミ箱に投げ捨てた。
何だか判らないけれど…隣のカップルは顔を赤らめながら「有り難く今夜、使わせて貰おうか」って、仲良く鞄にしまってたけれど。
何だったんだろう、あのお菓子。

