空気が…変わる。


今までの倦怠感に満ちた光を払拭し、怜悧に瞬く…紅紫色の瞳。


ああ…だから俺は、余計に久遠が嫌いなんだ。


ただの浅慮な遊び人ならいつまでも見下していられたのに。


この男は…元来、優れた頭脳の持ち主だということを、空気だけで伝えてくる。


決して顔だけの男ではないと、口先だけの男ではないと…その存在感で伝えてくる。


それが…各務現当主――

――…各務久遠。


「今は亡き白皇、緋狭…紅皇、氷皇、緑皇、黒皇の5人」


俺は頷いた。



「白、赤、青、緑、黒。だが…その本には氷皇の記録がない」



俺は目を細めて、本を見た。


五皇の歴史でも書かれているのか。



「五皇の出現は今のものではない。元老院の設置と共に、常に影として存在していた。

白皇、緑皇、黒皇、赤皇、黄皇が…代替わりで」


赤皇?

黄皇?



「赤と黄が…いつの間にか消え、紅皇と氷皇となった。

緋狭は女だから紅皇と名を変えたのは致し方ないとしても…氷皇の存在だけは異質なんだよ。

氷皇を名乗りだしたのは、あの青い男が初めてだ」


――あははははは~。



「黄皇は…何処に行った?」



黄色…。


俺はそこに得体の知れぬ何かを感じた。


黄色は…今回、俺に付きまとっている。


黄色い蝶。


黄色い外套男。


黄衣の王。


黄の印。


黄色好きなイチル。


名前からしても…"黄幡"、"黄幡会"。



「お前…それ、どう思う?」


久遠が続けて指差したのは、画面。



(蒼`◇)<濃厚氷━☆(゚■゚紫)ノ



忌々しいゲーム開始の揶揄。