蓮も、日頃の久遠の怠惰さは辟易しているらしいが…基本主人に忠実で、畏敬の姿勢を崩さない。


全てを俺のせいにして、久遠を甘やかす。


それも久遠がつけあがる一因だと思う。


怒るのも疲れた俺は、わざとらしく大きな溜息をついて1人で本の探索を始める。


絶対、俺はこんな奴の下にはつきたくないし、下にもついて欲しくない。


悪くない頭を、何で活用しようとしないんだよ。


俺は古文書の文字やラテン語は自力で解読出来るが、ルーン文字など自信がない。


解読知識はあっても…実際原書だけで訳したことがないんだ。


つまり解読レベルは、良くて久遠と同じ。


だけどそんなこと言いたくもないから、俺は解読出来るという前提の久遠の言葉尻を、あえて否定していない。


肯定もしていないのだから、偽りは言っていない。勝手に勘違いして、俺に全てをやらせようとする久遠が悪い。


読書家であろうと勉強家であろうと…飽きて調べることが面倒にでもなったのだろう、生憎俺は久遠の思い通りにはさせない。調べる時は、絶対引き摺り込んで俺主導で進めてやる。


ルーン文字とは、古代ゲルマンや北欧の民族が多く使い、神秘主義者の儀式や呪術に多く使用されたという言語。


ケルトの呪術師である「ドルイド教」の司祭がよく使用した文字だというが…こんな文字を日常語として使用していたとしたら、レグはドルイドの流れでも汲んでいたのだろうか。


或いは…秘密結社での勉学の賜物か。


ドルイド教は基督教の伝来と共に廃れたが、その一部で…基督教のカトリックとは一線を画した、独自の基督教として、新たな展開をもって、秘密裏に存続しているのもあるらしい。


仮に異端の基督教であるグノーシスとドルイドが結びつき…それに怪異な魔道書が絡んだ"秘密結社"に所属していたのだとしたら、その教えは崇高なものとは到底言えない。


魔道書が絡む時点で何処までも邪に侵されている。


魔術師ではない俺は、そこまで魔術関連の言語に明るいわけでもなく。


ルーン文字と思われる書簡は見つかったもの、その数多く、どれが"アタリ"か判別に時間がかかり過ぎた。