向かい側では、こうした事態を招いた元凶が、また熟睡していた。
「司狼。お前は遊び過ぎなのだ。どうして日課の仕事が出来ない?」
遠坂の横で、本を片付けつつ…大画面(モニター)を覗き込んでいた蓮が、鎮まった声を出した。
蓮は…以前の遠坂の指導により、ある程度の機械の知識はつけたらしい。
だから、遠坂は氷皇のパソコンにあるデータを"約束の地(カナン)"に転送したり、横須賀港において…横須賀の電力復旧を蓮に手伝って貰い、可能にすることが出来たらしい。
――蓮は飲み込み早いよ。戦闘より頭脳派、参謀タイプだね。久遠もさ、初めてのネットで財産築いているくらいだから、ソノ気になれば何でも出来る子だと思うんだけれど…本人がやる気0だからねえ。
宝の持ち腐れだと、以前遠坂は笑っていた。
その分、蓮が苦労しているらしい。
気づかないのは、怠惰な主だけだ。
いや、気づいたとしても…何もしようとしないだろう。
「仕事なんて嫌いだもん~」
司狼は欠伸をして後ろに反り返って、眠そうに言った。
「だって…面倒じゃないか、仕事なんて。
役目っていうのはもう沢山だよ。
全く。誰かが変なこと言い出したから」
と、俺を睨み付けてくる。
荒廃寸前の"約束の地(カナン)"を"遊園地"として存続させる条件として、俺が呈示したのは…久遠を始めとした彼らが働くこと。
生きる為に働くことが、何故"変なこと"になるのか。
彼らに課した仕事というのは、
――"風船配り"。

