――何故『妖蛆(ようしゅ)の秘密』ではなく『黄衣の王』の方が表に出ているのか。黄幡家について、詳しい所はオレも知らない。だが何十万冊の蔵書を誇る各務の書庫には、他家のことについて記載されていた書簡があったはずだ。今、司狼に調べさせている。もうそろそろ見つけ終わった頃だろう。
そして足を踏み入れた書庫には。
探し終えているはずの司狼が、棚によりかかって爆睡していた。
久遠の…怒りに満ちた無言の外気功により棚が崩れ…更には驚いて目を覚ました司狼が、久遠から逃げ出そうとした際、傍の棚に頭をぶつけ――
整然と並んでいた棚は、ドミノ倒し状態でばたばたと派手に音をたてて崩れた。
何処に何があったのか判らないくらいに書庫は本の山となり、その中に久遠の"見せたい"…或いは"手伝わせたい"書物が埋もれる結果となり、本の整頓がてら…"黄幡家"と"レグの残した怪しい資料"を探し出すことになったんだ。
声が出なくてよかった。
声が出ていたら、絶対俺は久遠に怒鳴っている。
"お前の監督責任に、俺を巻き込むな!!!"
だけど思ったんだ。
こんなやる気のない面倒臭がり久遠に書庫の整頓と探索を任せていたら、絶対1ヶ月たっても事態は好転しない。
俺は暇で遊びに来ているわけじゃないんだ。
だから渋々手伝った。
まだふらついているけど、本当に仕方がなく。
また悪いことに、怪しげな文字で書かれた古文書が多く…どれが該当する書簡なのか、中を確認しないといけなくて。
頭をフル回転させた。
俺が10冊見ている間に、久遠は1冊のペース。
お前、一度目に通したのなら、是非の判定ぐらいすぐつくだろうが。
何でそんなにじっくり本を見ているんだよ。
やる気出せ!!!
見ているだけでイライラしてくる。
まるで俺が久遠の部下のようじゃないか。
まず…俺達が隣り合わせに座ることもなかったんだ。
隣にいて、視界に絶えず入るから…腹だけ立って仕方がない。
だがそれは久遠も同じだったんだろう。
本に集中していたのは最初だけで…後は俺の手首の布を見てばかり。
頁を捲る際、手の動きにつれて布がひらひら揺れるのが気に入らないらしい。
そうしてこいつは、俺の本の探索をも邪魔をしているわけだ。

