「芹霞、ちょっとチケット見せて?」
僕は芹霞の手にした半券を奪い取り、素早く該当する単語の探査に目を走らせる。
『サスペンディセ サピエン アドボカト』
Suspendisse sapien advocato
おかしいとは思っていたんだ。
何でこんな時期、ラテンダンスで、僕達だけに構うのかなってさ。
「……ラテン語だよ、芹霞」
「え?」
「意味は、『幸せを呼ぶ青』」
間違いない。
こんなに青ばかりに拘る奇特な人間は他にはいない。
――あははははは~。
此処も氷皇の手の中だ。
それを告げるが為に、多分あのダンサーは雇われたのだろう。
そして卑猥な動きで、理性を抑える僕を煽るために。
何より、そんな僕の煩悶を…茶化す為に。
『幸せの踊り子(煽り専用)☆』
もう何処にも、ダンサーは出没する気配はない。
――あははははは~。
「遊びじゃないんだよ…僕は!!!
何が"幸せを呼ぶ"だッッ!!!」
項垂れ脱力するよりも、力一杯憤る。
今まで高揚感を得ていただけに、それだけの反動は凄まじい。
ずっとずっと温めていた僕の特権。
色々考えていた僕だけの特権。
その行使にあたって、どうしてここまで執拗に"青"が付き纏うのか。
折角少しずつ芹霞を意識させているのに…変な方向に意識されたらどうするんだよ!!!
警戒されたら、僕どうしたらいいんだよ!!!
不幸を呼ぶ青、じゃないか!!!
氷皇如きに邪魔されて溜まるか!!!

