と思っていたら、反対側からも…またラテンダンス。
ふりふり、くねくね。
2組のダンサーは、艶めかしく僕達を取り囲む。
ここまで執拗に迫るのであれば…猥褻罪にならないのだろうか。
そして腰に小さくプレートが。
『幸せの踊り子(煽り専用)☆』
何だこの、胡散臭いプレートは。
煽り…専用…?
僕の気分は益々降下してくる。
更に…。
サービスの一環なのか、ノリなだけなのか…女性ダンサーが後ろから芹霞の腰を両手で掴み、同様な腰フリを強要させたんだ。
「や、やあん」
強制的だとはいえ、女性相手とはいえ…嫌がる芹霞から漏れた…男をソノ気にさせそうな声とその腰の動きに、誰もがいやらしい顔で芹霞に振り返るのを見て、体温が急降下した僕は――
「死にたい?」
今日、一番の殺気を送った。
途端に蒼白となったダンサーは、すぐに消え去った。
「S.S.Aって凄いトコだ。はあ…」
芹霞は四つん這い状態になって、地面に膝をついた。
僕は苦笑して芹霞を立たせた。
そしてぽんぽんと、コートの汚れを落としてあげながら…
「れ、玲くん?」
先程の芹霞の声と動きを、必死に考えるまいと堅い顔をしていたらしい。
「玲くん…ねえ」
つんつんと裾をひかれて、ようやく僕はいつものように笑う。
「いや、何だか凄く辛そうな顔していたから。体調悪いのかなって」
辛そう…ね。
君は本当に、肝心な部分には疎いのに、気づいて貰いたくないことには聡いよね。

